昨年、三島さんが優秀賞を戴いた作品です。自分が学生の頃に帰ったようなドキドキな感覚が思い出されます。
ぜひ皆さんも読んでみてください。
初恋
中学一年生のときだった。クラスにとても気の合うM君がいた。いつもふたりでくだらない話をしてはゲラゲラ笑っていた。わたしは毎日学校へ行くのが楽しみだった。
ある朝のこと、教室にはいると、M君がクラスで一番かわいいS子ちゃんと話をしていた。えっ。立ちすくむ。ほかの女の子と親しくなるなんて‥‥。信じられなかった。しかも彼はS子ちゃんといるとき、まんまるい目が糸のように細くなっていた。ご機嫌な証拠だ。そんなM君を見るのは辛かった。彼女のことが好きなのだろうか。わたしのことはもうどうでもいいのだろうか。
ご飯を食べていても風呂に入っていても、同じ問いが頭のなかでクルクルまわっていた。わたしのなかのM君はもはや男の子ではなくひとりの男だった。胸が痛くてたまらない。一週間が限界だった。日曜日、彼の家を探して玄関を開けた。
「わたしとS子ちゃんとどっちが好き?」
「う~ん。どっちも」
「どっちかにきめなさいよ!」
「う~ん。おまえ」
ばんざあい。勝った。心のなかで両手を挙げた。わたしの胸から一瞬で痛み消えた。
が、翌日から状況が変わったわけではない。M君は相変わらず、わたしともS子ちゃんとも目を糸のようにしてへらへらしていた。それでも私はもう平気だった。だって、彼はわたしのほうが好きだと言ったもの。
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